・映画の要約
エイリアン:ロムルスは、1979年に始まった「エイリアン」シリーズの原点回帰を強く意識した2024年公開のSFホラー映画である。物語の時系列は、シリーズ第1作『エイリアン』と第2作『エイリアン2』の間に位置づけられ、巨大企業の支配下に置かれた宇宙社会の底辺で生きる若者たちが、閉鎖された宇宙施設で未知の恐怖に直面する姿を描く。
舞台となるのは、放棄された宇宙ステーション「ロムルス」。主人公たちは過酷な労働環境から抜け出すため、一攫千金を狙ってこの施設へ侵入する。しかしそこは、かつてウェイランド・ユタニ社が極秘裏に進めていた研究の痕跡が残る場所だった。人類の管理欲と傲慢さが生み出した存在が、再び牙を剥くことになる。
本作は、シリーズ初期の「暗闇」「密閉空間」「得体の知れなさ」を重視し、派手な戦争描写よりも、逃げ場のない恐怖と生存本能に焦点を当てている。若者たちの視点から描かれることで、エイリアンという存在が再び未知の脅威として立ち上がる構成になっている。
・映画の時間
上映時間は 119分。
・ネタバレ(起承転結)
起:脱出を夢見る若者たち

劣悪な環境で搾取されるように生きる若者たちは、宇宙ステーション「ロムルス」に価値のある装備やデータが残されているという噂を信じ、危険な侵入計画を立てる。彼らにとってロムルスは、未来を変えるための唯一の賭けだった。施設は無人のように見え、最初は順調に探索が進む。
承:異変の兆候
施設内部には、かつて行われていた生体実験の痕跡が残されていた。破壊された隔離室、異様な残骸、意味不明な警告ログ。やがて、仲間の一人が不可解な事故に遭い、事態は急変する。彼らは、この場所が単なる廃墟ではないことを悟るが、すでに引き返すことは困難になっていた。
転:恐怖の顕在化
フェイスハガー、そしてゼノモーフの存在が明らかになり、ステーションは逃げ場のない地獄と化す。通信は遮断され、ドアは閉ざされ、暗闇の中で一人、また一人と犠牲者が増えていく。若者たちは武器も経験も乏しいまま、知恵と本能だけで生き延びようとする。エイリアンは狩る側として、完全に空間を支配していく。

結:生存の代償
わずかな生存者が、施設の自爆や脱出ポッドを利用して生還を試みる。だが助かるためには、仲間を見捨てる決断や、取り返しのつかない犠牲が必要だった。最終的に生き残った者は、宇宙の静寂の中で、自分が見てしまったものと共に生き続けることになる。エイリアンは完全に排除されたわけではなく、人類の業と共に存在し続けることが示唆されて映画は幕を閉じる。
・この映画と似ている映画
- エイリアン
密閉空間における未知の恐怖というシリーズの原点。 - サンシャイン
閉鎖された宇宙空間での心理的崩壊を描くSFスリラー。 - ドント・ブリーズ
逃げ場のない空間で捕食者と被害者が逆転する緊張感が共通する。
・この映画を見れるサービス
※配信状況は変更になる可能性があります。
・総評
『エイリアン:ロムルス』は、長寿シリーズが抱えがちな肥大化を一度リセットし、「怖いエイリアン」を取り戻すことに成功した作品である。近年のシリーズ作品が神話的設定や人類創造の物語へと広がっていったのに対し、本作は極めてシンプルだ。人間が知らなくていいものを見てしまい、逃げるしかなくなる。その原点に立ち返っている。
特に効果的なのは、主人公たちを軍人や専門家ではなく、社会の底辺で生きる若者に設定した点だ。彼らは銃火器にも戦術にも精通しておらず、エイリアンに対抗する術を持たない。その無力さが、観客に1979年版と同質の恐怖を思い出させる。暗闇に潜む音、天井から滴る液体、背後に気配を感じた瞬間の緊張感。そうした要素が丁寧に積み重ねられている。
また、本作はウェイランド・ユタニ社という企業の非人間性を、過剰な説明なしに描いている。放棄された施設と実験の痕跡だけで、人類が何を優先し、何を切り捨ててきたのかが伝わってくる。この抑制された語り口は、シリーズの世界観を理解している観客ほど深く刺さる。
一方で、物語は決して革新的ではない。展開自体は予想の範囲内であり、驚きよりも緊張の持続を重視している。その点を物足りなく感じる人もいるだろう。しかし本作の目的は、エイリアンという存在を再び「説明不能な恐怖」に戻すことにある。その意味では、余計な新設定を持ち込まなかった判断は評価に値する。
総じて『エイリアン:ロムルス』は、シリーズファンにとっても、初めてエイリアンに触れる観客にとっても、原点を体感できる一本である。宇宙は再び暗く、冷たく、そして人間に優しくない。その事実を思い出させる、誠実なSFホラーだ。
・スタッフキャスト
監督:フェデ・アルバレス
出演
ケイリー・スピーニー
デヴィッド・ジョンソン
ほか