・映画の要約
トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦は、2024年に公開された香港製作のアクション映画であり、かつて実在した巨大スラム「九龍城砦」を舞台に、裏社会の抗争と男たちの生き様を描いた作品である。監督はソイ・チェン。香港アクション映画の伝統を受け継ぎつつ、現代的な演出と圧倒的なセット美術によって、九龍城砦という伝説的空間をスクリーンに蘇らせている。
物語の中心にいるのは、逃亡者として九龍城砦に流れ着いた青年チャン・ロクワン。彼は生き延びるために城砦の裏社会に足を踏み入れ、やがて城砦を巡る巨大な抗争の渦中に巻き込まれていく。九龍城砦は無法地帯として描かれ、警察も法律も届かない空間でありながら、そこには独自の秩序と人間関係が存在する。本作は、単なるアクション映画にとどまらず、失われた香港の記憶と、そこで生きた人々への鎮魂歌としての側面も持っている。
・映画の時間
上映時間は 125分。
・ネタバレ(起承転結)

起:九龍城砦への流入
1980年代の香港。青年チャン・ロクワンは、裏社会のトラブルから逃れるため、九龍城砦へと足を踏み入れる。そこは迷路のように入り組んだ建物群と、昼夜を問わずうごめく人々が暮らす異世界だった。城砦を仕切るのは、伝説的な人物ロン・ギョンフォンを中心とする勢力で、彼らは城砦内部の秩序を保ちながらも、外部のギャングと緊張関係を保っていた。ロクワンは偶然の出来事から城砦の住人たちに受け入れられ、次第にその一員として生きるようになる。
承:抗争の兆し
城砦の外では、新興勢力が九龍城砦の支配権を狙い、武装を強めていた。内部でも世代交代や権力争いが進み、静かな均衡は崩れつつあった。ロクワンは護衛や使い走りを通じて裏社会の現実を学び、次第に戦う力と覚悟を身につけていく。城砦の住人たちは、ここが最後の居場所であることを理解しており、外部勢力の侵入は生活そのものを脅かすものだった。
転:全面衝突
ついに外部ギャングが大規模な武力侵攻を開始し、九龍城砦は戦場と化す。狭い通路、屋上、階段、室内がすべて戦闘空間となり、激しい肉弾戦と銃撃戦が繰り広げられる。ロクワンは仲間を守るため最前線に立ち、かつての逃亡者から戦士へと変貌していく。ロン・ギョンフォンもまた、城砦を守るため自ら前に出るが、抗争は多くの犠牲を生み出していく。
結:終焉と継承
激闘の末、侵攻勢力は退けられるが、九龍城砦はもはや元の姿を保てないほど傷ついていた。ロン・ギョンフォンは次世代に道を託し、自らは表舞台から退く。ロクワンは城砦に残ることを選び、この場所で生き続ける決意を固める。映画は、薄暗い通路に差し込むわずかな光とともに、九龍城砦という空間が持つ儚さと力強さを映し出しながら幕を閉じる。
・この映画と似ている映画
- ザ・レイド
閉鎖空間での激しい近接戦闘と階層構造を活かしたアクションが共通する。 - 修羅雪姫
暴力の中に美学と宿命を描く点で精神性が近い。 - インファナル・アフェア
香港裏社会を舞台に、忠誠と裏切りを描いた作品。
・この映画を見れるサービス
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・総評
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』は、香港アクション映画の歴史と魂を現代に蘇らせた力作である。九龍城砦という伝説的な場所を単なる舞台装置としてではなく、ひとつの「生き物」として描いている点が特筆すべき点だ。湿気を帯びた壁、絡み合う配管、絶え間なく滴る水音。それらすべてが画面から圧を放ち、観客を城砦の内部へと引きずり込む。
アクション演出は非常に肉体的で、CGに頼りすぎない格闘とスタントが中心となっている。狭い空間を活かした立体的な戦闘は、香港映画が培ってきた身体表現の集大成とも言える。単に強さを誇示するのではなく、疲労や痛みが蓄積していく様子を丁寧に描くことで、戦いの重みが観客に伝わってくる。
物語の核にあるのは、居場所を失った者たちの連帯である。九龍城砦は無法地帯でありながら、外の世界から弾かれた人々にとっては唯一の安住の地でもある。その場所を守るために戦う姿は、善悪を超えた人間の本能として描かれる。主人公ロクワンの成長物語も、その流れの中で自然に機能しており、観客は彼と共に城砦の住人になったかのような感覚を味わう。
一方で、本作は九龍城砦の終焉が近いことも暗示している。抗争に勝利しても、時代の流れそのものには抗えない。その事実が物語全体にほろ苦い余韻を与えている。だからこそ、この映画は単なるアクション娯楽ではなく、失われた香港へのレクイエムとして強い印象を残す。
総じて『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』は、香港映画の過去と現在をつなぐ重要な一本であり、アクション映画ファンのみならず、都市や歴史に興味のある観客にも深く刺さる作品である。観終わった後、九龍城砦という存在が、単なるスラムではなく「生きた記憶」であったことを強く感じさせるだろう。
・スタッフキャスト
監督:ソイ・チェン
出演
チャン・ロクワン:レイモンド・ラム
ロン・ギョンフォン:ルイス・クー
ほか多数